Kenji Yanagawa Architect & Associates

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カテゴリ:建築採集(2017年)( 20 )


1次産業(資源)×2次産業(加工)×3次産業(流通・販売) =6次産業


白州蒸留所は、サントリーウイスキー誕生50周年を記念して1973年、山梨県北杜市白州町に建設されました。蒸留所の一部は、ウイスキーの製造工程を見学できるように計画され、見学ツアーやウイスキーを美味しく飲むレクチャーも受けることができます。また、ウイスキー博物館が併設されており、ウイスキーの歴史なども学べます。

ウイスキーの生産地にこの場所が選ばれたのは、南アルプスの山々をくぐり抜けきたミネラルを含むキレの良い軟水を確保できることが大きな理由だったようです。その為に、自然豊かな広大な土地の確保、及び維持管理を続けているそうです。

限られた資源の中でどう豊かな生活をおくるかを考えてみると、高付加価値化が一つの方法であると思います。モノの値段を上げるのではなく、商品の取り巻く環境(ストーリー)を販売することで、モノに新たな価値を付加できます。
サントリーは、飲料品メーカーの仕事を『飲料品を製造する』から、『資源の生産から消費者の口へ届くまでのストーリーを販売する』に変えたのではないでしょうか。

建物を生活資源と定義してみると建設産業は一次産業だと思います。今回、白州蒸留所を訪れてみて、建築家の仕事もどうあるべきなのかを考えさせられました。


探訪日: 2017/ 05
探訪者: 柳川 実理
所在地: 山梨県 北杜市
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by mys-style | 2017-11-17 09:00 | 建築採集(2017年)

森の中の美術館「クレラー・ミュラー美術館」


クレラー・ミュラー美術館は、オランダの中央部、オッテルロー村にあります。
設計は、オランダの建築家ヴィムG・クイストにより1977年に完成しました。

アムステルダムの駅から鉄道で1時間、バスを乗り継ぎ1時間の小旅行です。
デ・ホーヘ・フェルウェ国立公園の中にこの美術館はあります。

森の中にさりげなく置かれた現代彫刻に招かれながら、木立に囲まれたまっすぐなアプローチを抜けると、ミースやジョンソンの代表作品「ガラスの家」を彷彿させるシンプルで透明感のあるデザインが目に飛び込んできます。

この鉄とガラスの建築は、内外を一体化させた開放的な緑の美術館です。
従来の閉鎖的な展示空間を伴った、建築そのものが強い個性を放つ美術館ではなく、森の木立と同化することで、展示作品をより良く鑑賞できる空間となっています。森の中でゴッホの「糸杉と星の見える道」に出会えます。

まさに「森の中の美術館」でした。


探訪日: 2006/ 06
探訪者: 柳川 賢次
所在地: オランダ オッテルロー
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by mys-style | 2017-10-31 09:00 | 建築採集(2017年)

「見せ方」から「見え方」へ


「国立新美術館」は、2002年に黒川紀章 氏によって設計され、2007年に開館しました。そして、国立美術館で唯一コレクションを持たず、常設展示を行わない美術館です。展示会の開催・情報収集およびその公開・教育普及を主な目的とした新たな美術館のあり方を示しています。

この建築物の大きな特徴としては、なんと言ってもその外観です。垂直に設けられたガラスの壁面と水平に設けられたガラスのルーバーで外壁のカーテンウォールが構成されており、その外壁が複雑な自然曲線(フラクタル曲線)になっています。そして、水平のガラス板には、水玉のドット模様がエッジングされており、その模様により日射遮蔽を行っています。
内部の特徴としては、ロビーに配置されている大きな逆円すい型の鉄筋コンクリートのコーンがあげられると思います。床面積が上に行くほど広がり、下に行くほど狭くなる形状の特徴を生かしながら、上にレストランを配置し、下のロビー・スペースを極力邪魔しない配慮がなされています。また、吹抜けのある大空間にあっても、床に吹出し口を設けることで、人の利用域のみを空調するとても効率的な設備計画となっています。

昨今、写真の専用のアプリを利用して撮影するなど、「見せ方」の工夫が盛んになっていますが、何か違和感を覚えます。
モノの「見せ方」を変えるのではなく、モノの「見え方」を変えることでそのモノの新たな特徴を発見することや、そのモノの価値を再認識できることに意義があるように思います。

今回、国立新美術館を訪れてみて、利用者や自然環境に配慮しながら、いろいろな企画が実現できる場になっており、モノの「見え方」の重要性に気づかせてくれるすばらしい建築物であると感じました。


探訪日: 2016/ 04
探訪者: 柳川 実理
所在地: 東京都 港区六本木
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by mys-style | 2017-09-29 09:00 | 建築採集(2017年)

自動車が創り出す物語


メルセデス・ベンツ博物館は、シュトゥットガルトの郊外にあります。
設計は、オランダの建築家ユニット ベン・ファン・ベルケンとカロリン・ボスにより2006年に完成しました。

建物は9層で内部は二重らせん構造になっていて、各フロアーはゆるやかなスロープでつながっています。
入館者はまず、近未来を体感しながらエレベーターで最上階まで運ばれます。
到着すると、まるでタイムマシーンの扉が開かれたように自動車の創成期が目の前に現われます。らせん状の経路(スロープ)に沿いながら自動車が創り出す時間旅行が始まります。
それぞれの展示物(自動車)固有の技術や歴史、伝統を展示し、あらゆる角度
(上下左右)から眺めることが出来ます。その配置や照明などの工夫も素晴らしい。

スロープが創り出す連続空間を進むうちに、人はいつのまにか展示物の前を通り過ぎます。展示物は(自動車)は動かず、動くのは人間です。

過去から現代そして未来へと、これからも絶えまなく続くであろう「自動車が創り出す物語」は、「人間が創り出す物語」そのものではないでしょうか。

探訪日: 2015/ 01
探訪者: 柳川 賢次
所在地: ドイツ シュトゥットガルト
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by mys-style | 2017-08-18 09:00 | 建築採集(2017年)

文化を発表する場所


「まるごとにっぽん」は、東京楽天地浅草ビルの1階から4階にある商業施設です。ビルの建替え事業の一環として進められ、竹中工務店の設計・施工により、2015年12月にオープンしました。浅草六区に賑わいを取り戻すことと都市部への人口流出に伴う地方の疲弊を改善することを目的に創られました。

すでにブランドが確立された商品は扱わず、東京初出展となる地方自治体と地方事業者をメインに出店する事とし、流通が難しい少数の商品を販売することのできる販路開拓支援、店舗内装や什器を用意する初期投資支援などを行っています。また、フロア構成としては、1階に食品販売店、2階に日用品販売店、3階に情報発信、実演・体験コーナー、4階に飲食店が設けられています。

昨今、地方創成という言葉をよく耳にしますが、なかなか具体的な行動を起こしにくいのが現実です。そうした中、このような施設が東京にできたことで、地方に住む人に大きな情報発信のチャンスができました。

「まるごとにっぽん」のロゴからは、日本という丸い重箱のふたを開けると、素晴らしいモノがたくさんあり、それが格子状につながり、ひろがり、強く結びついているのだというメッセージが伝わってきます。
「○○ファースト」などの言葉が踊る時代に、地方へ目を向けた施設やシステムを創り、『日本全体でがんばっていこうよ』とった企画者の熱いエネルギーを感じとれる施設でした。


探訪日: 2016/ 02
探訪者: 柳川 実理
所在地: 東京都 台東区 浅草
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by mys-style | 2017-07-21 09:00 | 建築採集(2017年)

今時のキャンパス


三十数年前、日本の大学は広い土地を求めて都市の郊外や地方都市へと移転していきました。欧米の大学のように構内に学生寮や既婚者寮、職員のための住居が無く、通学に時間を奪われていました。この数年で大学の在り方もさま変わりして、大阪の梅田界隈においてはサテライトキャンパスを含め十数校の大学が進出してきています。少子化に伴い学生数の減少は各大学の存続にかかわります。そこで都心の利便性と賑わいを活かし、人の集積と交流を求めた都市型キャンパスの登場となったようです。今回は、そうした大学を二つ紹介いたします。

■関西大学梅田キャンパス
KANDAI MeRISE(カンダイミライズ): www.kansai-u.ac.jp/umeda/
地上8階建て「人との交流」と「起業」をコンセプトに1・2階にカフェ(スターバックス)と本屋(蔦屋書店)を設け、起業しようとする人たちと交流できる解放されたキャンパスです。

■大阪工業大学梅田キャンパス
地上21階建ての高層キャンパスで、CO2の排出を抑え、環境負荷の低減を図った都市型のタワーキャンパスです。1~4階に解放されたエントランス・ギャラリーや通り抜けが出来る公開空地・カフェテラスを備え、21階はレストラン等の賑わいエリアとなっています。
コンセプトはイノベーションを目指した地域開放型キャンパスです。

国の方針は地方創生ですが、伝統のある大学が都市へ集まり、都市がより都市化していき、地方都市や郊外がより衰退していくと、日本全体の繁栄は望めないように思います。
起業やイノベーションを地方都市から起こすことこそ地方再生ではないでしょうか。

探訪日: 2017 / 05
探訪者: 柳川 賢次
所在地: 大阪 梅田界隈
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by mys-style | 2017-06-30 09:00 | 建築採集(2017年)

文化を創る場所


茅野市民館は、市民による、市民のための施設をテーマに、2001年に公開プロポーザルが行われました。竣工までに、建築家 古谷誠章 氏(NASCA)、茅野市設計事務所協会、及び市民の代表達によるワークショップを数多く行い完成されました。

この市民館は、劇場や音楽ホール、美術館、図書館、スタジオ、レストランなどの機能を合わせ持った文化複合施設で、茅野駅に隣接しています。建築物だけでなく、敷地全体が都市の広場や公園のような使い方が可能になっています。
劇場は、舞台からロビー、中庭へと連続的につながり、一体的に利用することができます。また、図書スペースは、駅からアプローチすることができ、駅の待合い場のようにもなっています。

現在、首都圏では地方の情報発信や商品販売ができる環境が整ってきました。こうした状況下で、いかに地方が独自性のある商品を開発するかで今後の地方の発展が左右されると思います。そのためには、まず地方の独自性、すなわち文化をしっかりと理解しないといけないのではないでしょうか。

今回、茅野市民館を訪れてみて、ここは、市民が自分たちの文化の魅力を再発見し、育み、独自性のある文化を創ることのできる場所になり得ると感じました。また、こうした施設が、地方創成の起爆剤に今後なっていくのだと思いました。

探訪日: 2017/ 05
探訪者: 柳川 実理
所在地: 長野県 茅野市
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by mys-style | 2017-06-16 09:00 | 建築採集(2017年)

鷲の巣村「ペイヨン」


南仏コートダジュールの山間には、切り立った崖や岩山の上に造られた通称「鷲の巣村」と呼ばれる小さな村が80以上点在しているようです。
その代表格はモナコ近郊の観光化された「エズ」ですが、ちょうど20年前にガイドブックにも載っていない、ニースから12㎞程内陸にある小さな鷲の巣村「ペイヨン」を訪れました。一日に数本しか無い鉄道の無人駅を降りると、その向こうに断崖に張り付いた村が見えます。

建築雑誌の小さな写真を握りしめ、汗をかきかき、獣道を登ること2時間余。
中世の街にタイムスリップです。
建物と地形が見事に一体となり村を造り出しています。迷路のような階段は道の階段か、建物の階段か、区別がつきません。

観光化されていない村ですが、一軒のオーベルジュ(一つ星)だけがありました。
ひと休みしていると、自動車の爆音が。そうです、イタリアの赤い撥ね馬「フェラーリ」です。ニースでシーリゾートに飽きた富裕層がやってきたようです。
獣道だけではなく、別ルートもあったような。

アクセスは不便ですが村の美しさを見れば後悔はないはずです。
中世の美しい街並が残る鷲の巣村「ペイヨン」へ、どうぞ足を運んでみてください。

探訪日: 1997/ 06
探訪者: 柳川 賢次
所在地: 南フランス ペイヨン
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by mys-style | 2017-06-02 09:00 | 建築採集(2017年)

魅力のつくり方


横浜港大さん橋国際客船ターミナルは、1980年代から日本の観光産業の成長に伴う観光客の増加、クルーズ産業の発展による船舶の巨大化に対応するために2002年に改修されました。現在では、客船ターミナルとしての機能だけではなく、横浜港のランドマークの一部であるとともに観光スポットとしての役割も担っています。

1995年に行われた国際設計競技で、41ヶ国、660作品の中から選ばれた、アレハンドロ・ザエラ・ポロとファッシド・ムサヴィにより設計されました。
当時では珍しいフルCGによるコンピュータでの設計が行われ、ユニークな形状でありながら快適で機能的な名建築の一つです。
内部は、折板構造の為、柱をなくすことができ、船底を逆さまにした様な形の大空間をフレキシブルに使用することが可能になっています。

現在では、高い評価を得ている今回の建築ですが、完成までには、
・想定していた構造方法では実現不可能
・初期案のイメージとは違う
・コストが想定より大幅にアップ
等々、数年前にどこかの競技場の新設案で聞いたような批判が15年前に起きていました。
実際に訪れてみると、建築そのものが横浜の景観の一部となり、もはや建築の領域を大きく超えていると感じました。また、屋上の芝生とウッドデッキからの眺めは、横浜の魅力を再確認させてくれる施設ともなっています。

横浜は、昔からハイカラの街と言われ、現在でも非常に魅力的な街です。この背景には、自分たちが良いと思えば、評価の定まっていないものであっても受け入れるという文化があるのかもしれません。
魅力は、『自分の感性を信じる力』の大きさで決まるのではないでしょうか。

探訪日: 2017/03
探訪者: 柳川 実理
所在地: 神奈川県 横浜市 中区
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by mys-style | 2017-05-19 09:00 | 建築採集(2017年)

浮遊する巨大ミュージアム(ポルシェ ミュージアム)


ポルシェ ミュージアムは、企業の理念や歴史、そして、同社のダイナミズムや創造のエネルギーを建築においてでも示し伝えています。

設計は170社による国際コンペでグランプリを獲得した、デルガン・マイスル・アソシエティッド・アーキテクトにより実施され、2008年に完成しました。
街道と鉄道の引き込み線に挟まれた三角形の敷地に、新たに設けた駅に隣接して建てられています。

4階建てのこの建物は、1階にエントランスホール・ロビー・ショップ・レストラン、
そして、来館者が修理の状況を見ることのできるメンテナンス工房があります。
1階ロビーに入ると、独立した大きな支柱が目に飛び込んできます。
エスカレーターがロビー中央から3階へ、傾斜しながら伸びています。
2階は吹き抜けとなっていて、3本の巨大な支柱で支えられており3・4階が持ち上げています。長さ160m 幅70m重さ35,000tの巨大な建物が浮遊しています。
まさにポルシェを象徴するダイナミックなフローティングストラクチャー(浮遊した構造物)が具現化されていました。
3・4階の展示空間はスロープでつながり、回遊しながら新旧のポルシェを観ることが出来ます。

ポルシェの伝統と時代に即したテクノロジーを垣間見ることにより、未来の自動車や社会の姿を体現することができました。

探訪日: 2015/ 01
探訪者: 柳川 賢次
所在地: ドイツ シュトゥットガルト
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by mys-style | 2017-04-26 09:00 | 建築採集(2017年)