Kenji Yanagawa Architect & Associates

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カテゴリ:建築採集(2017年)( 20 )


斬新かつ正統な建築


東京都墨田区にある『すみだ北斎美術館』は、建築家 妹島和世の設計により、2016年4月に竣工した葛飾北斎の作品を保存・展示する美術館です。また、作品の保存・展示以外にも研究や教育普及、さらに地域活性化の拠点としての役割も担っています。

この美術館は、1棟の大きな建物にするのではなく、いくつかの異なるボリュームの建物を集めることで、周囲の街並みに合わせるように配慮されています。また、それぞれの異なるボリュームの間にスリットを設けることで、内部から周辺のランドマークを見られると共に、東西南北4ヶ所に出入口があり、建物に正面がなく、表裏を作らない美術館になっています。そして、外部をアルミパネルで仕上げることにより、公園の緑や空、周りの風景を柔らかく映り込ますことで、周辺の環境になじむように計画されています。

近年は建物のボリューム感をおさえる為に、建物の地階化、壁面緑化、映像技術の進化により、建物全体に映像を映し出すことで、建物の存在を消すことが可能になってきています。最新技術を使い新しい建築の在り方を模索することは素晴らしいことですが、今まで培ってきた日本人の文化を反映させた建築も大事ではないでしょうか。

このすみだ北斎美術館は、真新しさを感じる一方で、プライバシーを守りながらも、周辺から自由に行き来できる『路地』、周辺の雰囲気を感じられる『障子』、周辺の景色を建物に取り込む『借景』など、日本の伝統文化を感じとることのできる斬新な建物でした。

探訪日: 2017/ 02
探訪者: 柳川 実理
所在地: 東京都 墨田区 亀沢
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by mys-style | 2017-04-07 09:00 | 建築採集(2017年)

ブラザークラウス野外教会


この教会は、この地に住むご夫妻の依頼で建てられたものです。設計から9年かかって、 2007年に完成しました。ここの村人とクライアントのご夫妻と、そして、建築家であるピーター・ズントー自身が、一緒になって施工したそうです。まさにセルフビルドな建築です。

建物の工法がとっても変わっています。内壁は100本を超える長い丸太をテントのような形に組み、コンクリートの型枠として使っています。その周囲にコンクリートを50㎝ずつ流し込み、固まったのちに内型枠の丸太を燃やす事で、内部空間を作りました。

この空間は丸太の丸い跡が残る特徴的な表現で、焼けた後の煤で壁が黒く、暗くなっています。天井は抜けており、煙突状の空間です。黒い煤がついたギザギザの荒々しい壁を、天空からの光が柔らかくなめるように降りてきます。

また、壁にある無数のセパ穴には、ガラス玉が埋め込まれています。天空から降り注ぐ神々しい光が、ガラス玉に反射し、光が漏れる幻想的な空間が展開します。ガラス玉から漏れ落ちる光、空、雲の動きなど、その時々により表情が変化するこの光景は、荒々しさの中に、人の手で作られた温もりを感じる原始的で崇高な空間を創り出していました。

訪れた時は風花が舞い込み、コンクリートの荒々しさと相まった、幻想的な光が踊る魅力的な空間を体験することが出来ました。

※内部は撮影禁止でしたので他のサイトをご覧ください。

探訪日: 2015 / 01
探訪者: 柳川 賢次
所在地: ドイツ ケルン郊外
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by mys-style | 2017-03-31 09:00 | 建築採集(2017年)

蔦屋 T-SITE 枚方


蔦屋T-SITE は、蔦屋書店創業地として枚方駅前に、竹中工務店の設計施工により2016年に造られました。
枚方市は大阪府北河内地域に位置しており、かつては京都府と奈良県の県境の宿場町として発展しました。近年は、ロードサイドに様々な施設が建てられ、駅前は空洞化しつつある郊外型都市となっていました。そこにこの度、「街のリビング」をコンセプトに、書籍を媒介として建物全体を回遊しながら、さまざまなモノやサービスを提供する生活提案型のショッピングストリートとして建設されました。

構成としては、積み木を互い違いに重ねたように積み上げ、交差した部分に大きな吹抜空間を設けたワンルームになっています。すべてのゾーンに設けられた本棚・書籍がブックストリートを創り出し、横にも縦にも移動しながら楽しむことができます。
読書やカフェスペース・販売スペースを限定するのではなく、気が向いたところで本を読み、お茶を飲み、商品を手にすることができる、居心地の良い空間となっていました。
また、本に囲まれてのワークショップやタウンミーティング等のコミュニティースペースとしても有効に機能しています。

まさに「街のリビング」としての商業施設と言えるのではないでしょうか。
従前の駅前再開発ビルのように各権利者に床面積を配分した商業施設ではなく、明確なコンセプトを企画し、具現化できる設計と施工の能力でもって、訪れる人を魅了し、ヒト・モノ・サービスを結びつけた魅力ある作品となっていました。

探訪日: 2017/ 02
探訪者: 柳川 賢次
所在地: 大阪府 枚方市 蔦屋 T-SITE
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by mys-style | 2017-03-16 09:00 | 建築採集(2017年)

変わらないための変化


東京都中央区銀座のソニービルは、建築家、芦原義信の設計により、1966年にオープンしたソニーのショールームです。
その当時、ひとつの電気専業メーカーが日本で一番地価の高い場所に自社のショールームを建てることは、「正気の沙汰でない!」と多くの日本人に思われたそうです。人によっては、「思い上がり」と捉えられる可能性がある状況でした。

このショールームでは、訪れた人々が、つぎつぎと興味をもって見て廻れるように、「ハナビラ構造」というコンセプトで計画されました。それは、1つの階を田の字型に4つに分け、真ん中の柱を中心に4つのセクションを90センチずつ段違いにして、ひと回りでちょうど1階分下がるという四角のハナビラがうずまき状に回っていく構成です。これにより、建物全体が縦に連続して上から下まで何階という区切りなしに、縦型のプロムナードとして成り立っています。また、若者たちが合言葉のように「ソニービルで会いましょう」と集まることを願い、地価の高い敷地一杯に建物を建てることをせず、敷地の一部をオープンスペースにしています。

近年、今ある建物を有効利用するという動きが活発になり、建て替え工事が積極的に行われないようになってきています。しかし、時代に合っていない建物を無理に残す必要があるのか疑問に思います。

現在のソニービルは、解体され、すぐに「新ソニービル」を建設するのではなく、2年間「銀座ソニーパーク」として活用されます。公園の少ない銀座の街に公共スペースを作ること自体がとても画期的なことです。
ソニーは、モノ創りの企業でありながら、モノを残そうとしているのではなく、創業者の「挑戦」という思いを後世に残そうとしているのではないでしょうか。

探訪日: 2017/ 01
探訪者: 柳川 実理
所在地: 東京都 中央区 銀座
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by mys-style | 2017-03-10 09:00 | 建築採集(2017年)

自動車と建築のデザインレース(BMWワールド)


BMWワールドは、本社やBMWミュージアム、そして、オリンピックパークに隣接して建っています。
BMWブランドの体験と、商談及び車の引き渡しを行う巨大ショールームです。
設計はコープ・ヒメルブラウンによるもので、2007年に完成しました。

造形的な大屋根をダブルコーンの構造体と数本の柱で支えています。
この開放的で明るい大空間のなかでBMWブランドを体験することが出来ます。
中央に設けられたプルミエールと呼ばれる車引渡し所にはスロープが設けられており、最上階のオーナー専用ラウンジでキーを受け取り、自走しながら退館するといった心憎いシチュエーションを味わうことが出来ます。館内にはライブショーが出来るホールやレストラン・カフェが併設されており、まさに近未来の自動車テーマパークとなっています。

耐久消費財としての自動車デザインは、3年から5年でモデルチェンジを繰り返し、
120~130年間にわたり、その時々の最先端技術で世界経済を牽引してきました。自動車デザインの歴史が5年おきの進化であるなら、建築デザインの進化は50年のスパンでしょうか?優れた建築は今を生き、愛され、未来を示唆し、導かなければなりません。

このBMWワールドの館内に置かれた最新モデルや未来の自動車がどのようなスピードでこの建物を追い越すのか、自動車と建築とのデザインレースの始まりを見たような気がします。100年後のこの建築が色あせずにクラシカルな味わいを放ちながらニューモデルを何時までも包み込んでいてほしいものです。

探訪日: 2015 / 01
探訪者: 柳川 賢次
所在地: ドイツ ミュンヘン BMWワールド
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by mys-style | 2017-03-03 09:00 | 建築採集(2017年)

残したくなる建築を


甲子園会館は、フランク・ロイド・ライトの弟子、遠藤新の設計により、1930年に甲子園ホテルとして竣工しました。「東の帝国ホテル、西の甲子園ホテル」と称されていました。

この建築は、屋根には淡路産の緑の瓦、内外に打出の小槌のオーナメント、ホール天井には市松模様など、洋式建築に巧みに和の要素が取り入れられています。太平洋戦争の激化により、この建築が実際にホテルとして使われた期間は、わずか14年です。しかし、用途を変えながら残りつづけ、現在では、客室部分を講義室に変えるなどの大改修が行われ、武庫川女子大学の学舎として利用されています。

現在、日本では既存住宅の1割超が空き家となっていると言われています。「新しく何を造るか」よりも「今あるものをどう使うか」という時代に移りつつあり、法律もそれに合わせて変わり始めました。この時代の移り変わりが上手く進むためには、人に「残したい建築物」と思わせる魅力を持っていることが一層重要だと思います。
それは、風景としての魅力、使い心地、細部に光る職人技、はたまた立地かもしれません。

甲子園会館から、時代を超えて、人の心をも動かす建築の魅力の重要性について考えさせられました。

探訪日: 2016 / 07
探訪者
: 松井 悠成
所在地: 兵庫県 西宮市
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by mys-style | 2017-02-17 09:00 | 建築採集(2017年)

『建設する』から『建築する』へ


国立西洋美術館は、第二次世界大戦後、日本とフランスの国交回復・関係改善の象徴として、ル・コルビュジェの設計により、1959年、上野公園内に建設されました。また、2007年に国の重要文化財、2016年には世界遺産にも登録され、世界的に重要な建築物として認識されています。

この建築は、ル・コルビュジェが提唱した近代建築の五原則(ピロティー、自由な平面、自由な立面、水平連続窓、屋上庭園)を具現化していることが一番の特徴です。そして、この特徴に加え、吹抜けホールを建物中央に配置し、その周りに配置された回廊型の展示室へ、スロープで昇っていく渦巻き型の動線計画が採用されています。これは、『無限成長美術館』というコンセプトで、巻貝が成長するように外側にどんどん美術館を拡張できるようになっています。

国立西洋美術館を訪れてみて、現在では一般的になったトップライトによる採光の確保、フロアレベルを変えることによる空間の変化、スロープによる視線の変化と建築のストーリー性などなど、3D化された建築の教科書を読んでいるように感じました。

建築として当たり前のことが、実は一番難しく、一般的に建物を建てることで建築を行っているようなっているような気がしました。
只々、機能を充足させた建物を『建設する』ことから、豊かな空間性を備えたドラマチックな建物を『建築する』ようにしたいものです。

探訪日: 2016 / 11
探訪者
: 柳川 実理
所在地: 東京都 台東区 上野公園
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by mys-style | 2017-02-10 09:00 | 建築採集(2017年)

時空を超えた現代建築


ケルンの聖コロンバ教会美術館は、第二次世界大戦で破壊された教会とローマ時代の遺跡、そして美術館と、三つの施設が入っています。
ピーター・ズントーがコンペで勝利し、2007年に完成しました。

外壁はうすいグレーのレンガで仕上げられており、その壁面の一部にランダムに設けられた無数の開口部から差し込む光と空気によって、遺跡部分が神秘的な空間に創りあげられています。
美術館の内壁はコンクリート打ち放しの滑らかな仕上げになっており、床も繋ぎ目の見えないテラゾーで構成されているミニマムでストイックな空間です。
また、展示室の所々に設けられた大きな窓からは、ケルン大聖堂はもとよりケルンの街並みを望むことが出来ます。

この建物は比較的新しい建物ですが、一向に新しく見えません。むしろ古ささえ感じます。
ローマ時代からの時間の流れも共存してしまう、まさに「空間・時間・建築」の匠、ズントー建築の真骨頂ではないでしょうか。

ケルンでまた一つ、時空を超えた現代建築に出会えました。

探訪日: 2015 / 01
探訪者
: 柳川 賢次
所在地: ドイツ ケルン 聖コロンバ教会美術館
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by mys-style | 2017-02-03 09:01 | 建築採集(2017年)

会津さざえ堂


福島県にある会津さざえ堂(正式名称:円通三匝堂)は江戸時代後期の1796年に建てられた高さ16.5mの仏堂です。六角形の平面と、内部を通る二重螺旋の斜路が特徴的な建物です。
螺旋が二重になっているため、上りの斜路と下りの斜路が交差することなく出口まで歩いて通れるようになっています。
また、その斜路の形状が外観にも反映され、まさに「さざえ」のような異質な形を作っています。

本来このお堂は、斜路に沿って配置されている観音像をお参りするためのものですが、現在では取り払われています。
本来の意味はなくなったかもしれない今でもこの建物が魅力的に思えるのは、訪れた時に感じる「ワクワク感」です。
サザエのような外観から『これから中で何が起こるのだろう』というワクワク感。
螺旋で見通しが効かないが故に思う『この先に何があるのだろう』というワクワク感。
これらは、自然に建物の中に人を誘い、斜路を登らせ、出口までワクワク歩かせることでしょう。

このような「ワクワク感」は建築においても非常に重要だと考えます。
訪問したのは5年前ですが、建築にとって大切なことを再確認させられ、今なお強く心に刻まれています。

探訪日: 2011 / 06
探訪者
: 松井 悠成
所在地: 福島県 会津若松市
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by mys-style | 2017-01-13 09:03 | 建築採集(2017年)

伝統を受け継ぐ難しさ


東京ガーデンテラス紀尾井町は、2016年5月に日建建設により設計された複合施設です。また、皇族建築を代表する旧李王家東京邸(赤坂プリンスクラシックハウス)や、数少ない現存する江戸城の外濠の一つである弁慶濠に隣接しており、歴史を感じさせる場所に建設されています。

この施設の特徴としては、商業施設、オフィス、ホテルという異なる用途の違いを外壁のファサードに活かしていることです。低層部の商業施設には、弁慶濠との一体感を持たせるために、御影石を基調とし外壁がデザインされています。中層部のオフィスでは、外壁をアルミニウムのフレームで構成し、縦軸を強調しています。また、高層部のホテルでは、そのフレームのモジュールを中層とは変化させています。そして、これら3層に積層するボリュームは、日本の伝統的なモチーフである『重箱』を意識してデザインされています。

資本主義をベースに創り出した現代社会においては、如何に効率を上げ、商品の値段を下げられるかが産業の基本となりました。そのため、建築資材のほとんどの製品が工場生産され、いたる所で同じような建築物が建てられる傾向にあります。また、立ち止まって何かを考える時間さえも削られてきています。

丹下健三 氏は、このような言葉を残しています。
『日本の伝統を否定し、変革しつつ、しかも正しく受け継ぐ』

やはり、考える時間は必要ではないでしょうか?

探訪日: 2016 / 10
探訪者
: 柳川 実理
所在地: 東京都 千代田区
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by mys-style | 2017-01-05 08:58 | 建築採集(2017年)